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【コラム】月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げと代替休暇制度の概要について(法改正)2

2023年03月06日

「【コラム】月60時間超の時間外労働に関する割増賃金率の引き上げと代替休暇制度の概要について(法改正)1」はこちらからご覧ください。

 

2 引き上げ分の割増賃金の代わりの代替休暇制度

⑴ 改正の概要

中小企業についても月60時間超の割増賃金率の引き上げが適用されことになりましたが、同時に、「代替休暇」制度を設けることが可能となります。

「代替休暇」とは、1か月について法定時間外労働を60時間超えて行わせた労働者に対して、労使協定により、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金の支払に代えて、有給の休暇を与える制度です(労働基準法第37条第3項)。特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与えることが目的と言われています。

なお、代替休暇の対象となるのは、月60時間を超えて法定割増賃金率が引き上げられた部分(通常は50%-25%=25%の部分)についてだけなので、月60時間を超えた分であっても、従前の25%部分は、割増賃金として支払う必要があります。

 ⑵ 代替休暇の時間数

代替休暇として与えられる時間の時間数は以下の通りです。

(1か月の法定時間外労働の時間数-60時間)×換算率

※換算率とは、「代替休暇を取得しなかった場合の割増賃金率-代替休暇を取得した場合の割増賃金率」のことです。通常は、「50%-25%」となり、ほとんどは25%の換算率になると思われます。

例えば、該当月の法定時間外労働時間数が80時間の場合、以下の計算により、代替休暇の時間数は5時間になります。

※計算例 (80時間-60時間)×25%=5時間

⑶ 代替休暇制度の注意点

代替休暇制度導入の注意点は、以下の通りです。

①代替休暇制度を導入する場合には、企業と従業員の過半数代表者との間で、労使協定を締結する必要があります(労使委員会の決議等の方法もあります。)。

(労使協定に定める事項・労働基準法施行規則第19条の2)

・代替休暇として与えることができる時間数の算定方法

・代替休暇の単位

・代替休暇を与えることができる期間

②1日又は半日の単位で与える必要があります。

③時間外労働が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内とされており、労使協定では、この範囲内で定める必要があります。

なお、労働者が、元々代替休暇取得の意向があったものの、実際には代替休暇を取得できなかったときには、法定割増賃金率の引上げ分の割増賃金について、労働者が代替休暇を取得できないことが確定した賃金計算期間に係る賃金支払日に支払う必要があります。

⑷ まとめ

代替休暇制度を導入しても、個々の労働者が実際に代替休暇を取得するか否かは、あくまで労働者の意思によります。そして、代替休暇が取得できなかった場合には、当然その分の割増賃金を支払う必要があります。長時間労働を避けることが一番重要ではありますが、そもそも有給休暇をしっかり消化できているのか(休暇が取りやすいかどうか)等の実態を確認した上で、代替休暇の制度を設けるかどうかの検討を行なう必要があります。

以上

(弁護士 浅倉稔雅)