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【法務コラム】「キャンペーン価格」と不当表示

2018年08月30日

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■「キャンペーン価格」と不当表示
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主に仙台市内で営業しているA社が,自社のホームページ上に,新装開店にあわせたキャンペーン価格として自社製品を通常よりも1割安い価格で商品を販売する旨を掲載しました。
ところが,新装開店から1年以上経過しているのにまだ「キャンペーン価格」で販売を続け,ホームページもそのような記載のままになっています。
このようなホームページの記載は法的には問題はないでしょうか。

いまやネット時代。
インターネットの普及で情報の受け手があらゆる分野の情報をスマートホンで簡単に検索しアクセスできるようになっただけではなく, 情報の送り手も,かつてとは比較にならないくらい簡単に,かつ費用をかけずに発信できるようになっています。
このようなホームページを使った広告・宣伝活動は手軽ではある反面で,誰でもアクセス・検索できることゆえの注意も必要になってきます。
インターネットを使う・使わないにかかわらず,広告・宣伝活動に対しては「不当景品類及び不当表示防止法(「景表法」と略称します)」という法律が問題となってきます。
景表法では,一般消費者に対して商品やサービスの品質や内容について表示する場合に不当な表示をすること,具体的には①優良誤認表示,②有利誤認表示および③その他誤認されるおそれのある表示が禁止されます。
かつて社会的に問題となった産地偽装などは,商品の原産地について実際とは異なる事実を記載しており,著しく優良であると誤認させるおそれがあれば①の優良誤認表示にあたります。
今回のケースのような「キャンペーン価格」と比較の対象としての通常価格を表示することは「二重価格表示」とされますが, あまりに長期間にわたり「キャンペーン価格」であると掲載しつづけることは,取引条件を著しく有利に見せかけるものとして②の有利誤認表示に該当する可能性があります。
景表法の運用の歴史からすれば,これまではある程度の社会的な重大性が重視されてきたといえます。
全国的に有名な企業やお店の行為か,あるいは極めて重大な不当表示が中心に摘発されてきたように思えます。  
ところがネットでの広告宣伝活動は取り締まる側も簡単にアクセスできるためか,これまでは景表法とは無縁と考えられてきたような中小企業であったり, 地域的に限定された営業活動しかしていない事業者に対しても対象になっているようです。
景表法はネットの内外を問わず,一般消費者に対して誤認させるおそれのある不当な表示を禁止するものですから, 競争相手もやっている,あるいは昔からこの業界では認められている,というようなものであっても,いちど見直してみてはいかがでしょうか。

(弁護士 長尾浩行)


※この記事はメールマガジン2018年2月号で配信した記事と同一の内容です。